ロペテギの就任と解任
6月12日、レアルマドリードの新監督にスペイン代表監督のロペテギ就任が公式に発表された。契約期間は3年となっている。
様々な候補がメディアに挙がっていた中で、ロペテギはサプライズ人事となった。代表との契約を3週間前に更新しており、どのメディアも予想に挙がっていなかった。サッカーは何が起こるかわからないを地で行くようなニュースである。
発表はワールドカップ開催の2日前にされた。マドリーとしては一刻も早く新体制のもとクラブ運営をしたかったことや、ジダン辞任後1ヶ月も新しい監督がみつからないのはクラブの価値を損なうという判断したためこのタイミングになったと考えている。
結果的にこの判断により、ロペテギはスペインサッカー協会より解任されてしまった。
たった2日の間で就任と解任を体験する監督はそういない。しかもレアルマドリードとスペイン代表の監督だ。彼にとっては天国と地獄。そう形容するのがふさわしいような結末となってしまった。
ペレス会長以下、経営陣が顛末をどう思っているかは定かではないが、おそらくプラスとマイナスならプラスのほうに捉えているのではないか。
スペイン代表の人気はレアルとバルサ、スペイン中にある大小の地域に密着したクラブからすれば大きくない。サッカー文化が定着している分、国よりも地域に愛着をもって熱狂的に応援するファンのほうが多い。
だからワールドカップの直前に代表監督を引き抜いて発表することを行っても、クラブへのダメージは小さいと判断したのではないだろうか。
そうでなければ、「クラブのイメージ」を何より大事にするペレスがこういった判断をするとは思えない。
現場の観点からみても、早期に代表の仕事が終わり、新シーズンのチーム運営を行ってもらいたかったのは間違いない。
クラブのイメージは短期的に残っても長期的にダメージが少ないだろう。
しかし、ロペテギ本人のダメージは深刻な様相だ。
イエロが相当大きなジェスチャーでロペテギへ一方的に何かをまくしたてるように言い、ロペテギは何も言わずただうつむいて聞いているだけだ。
イエロはスペインサッカー協会の職に就いているため、今回の判断を批判しているのだろう。
報道では、「協会はロペテギとマドリーが交渉していたのは把握していた」や「ロペテギが協会にマドリー就任を知らせたのは公式発表5分前」と真偽が不明なので、イエロが何を言ったのかはわからない。
どちらにせよ、ロペテギとマドリーのスペインサッカー協会への対応はまずかったと言うしかない。結果は、マドリーへの来季新監督になることが就任発表⇒即代表監督解任になったわけだ。
ロペテギはすぐにマドリーの仕事に取りかかれるのだろうか?ワールドカップの指揮をとれずクビになり、トップチームの監督しての実績は何も残していない。
救いなのは、ラモスやイニエスタがロペテギの続投を協会へ求めていた報道があること。ポルトガル戦まで2日しかないこともあるだろうが、ロペテギへの信頼がなければ選手たちから続投の声はでてこない。
特にラモスはマドリーのカピタンでもあるから、彼からの信任がないとチームをまとめるのは不可能だろう。
ロペテギは非常に複雑な状態での新監督就任になりそうだ。新しいシーズンはマドリディスタには辛い1年になるかもしれない。
プレシーズンまであと1ヶ月はあるので、それまでどういった動きがあるのか注視してワールドカップ視聴を楽しみたい。
ロナウドの移籍
ー移籍現実味ー
クリスティアーノ・ロナウドの移籍が盛り上がっている。
キエフでの優勝後のインタビューで本人が「マドリーでは幸せだった」と移籍をほのめかす発言をしてから一気に過熱している。
ロナウドの移籍は毎年の恒例行事となっていて「また今年もか」と結局残るのはわかっていたから楽しみながらみていたが今回はどうも様相が違う。
ペレスとホセ・アンヘル・サンチェスGMとロナウドの代理人メンデスが会談を行い、具体的にクラブ側が条件を提示し、受け入れられないなら移籍先をみつけてくださいとの報道が表にでている。
昨年までは、「ロナウドは残る」といったコメントしか表にでてこなかったので、真剣に経営陣は放出に向けた下地をつくっている印象を受ける。
ー選手としてブランドとしてのロナウドー
ロナウドは今年で34歳になる。一般的にサッカー選手のキャリアは25歳と短命である。この年齢になっても異次元の活躍をトップレベルで続けるのは日々のハードなトレーニングの賜物だろう。
誰しも体の衰えに伴うキャリアの終わりはいつかやってくる。34歳は一般社会ではまだまだ若いが、サッカー選手としては老体だ。
選手本人は、先日のEL Chiringuitoのインタビューで「40歳まで続けたい」と言っていたが、彼があと5年もマドリーで続けられる肉体をキープするのは至難の技だ。
どこかで「売るタイミング」がやってくる。クラブはマドリーで引退してもらうのか、今売って巨額の移籍金を得るのか?どちらかを決断する時期にきている。
選手としてははっきりと売る時期だが、マーケティングの面では放出するメリットはない。ロナウドのブランド力はサッカー選手のなかではトップであるうえ、世界中のスポーツ選手のなかでもトップクラスだ。
在籍9年間で、レアルマドリードの価値向上に最も貢献したといっても過言ではない。
選手としてのロナウド、ブランドとしてのロナウド。両方を天秤にかけたときにどちらを考慮するのか。
選手としてのロナウドの代わりはおらずブランドとしてもいない。
彼と同じ影響力をもつ選手はメッシくらいだ。残念ながらメッシはバルセロナの選手だから獲得はできない。
ネイマールはロナウドとメッシにはなれないが、近いところまではきている。
そうなると、今が最後の売るタイミングなのかもしれない。
今を逃せば中国かアメリカでキャリアの余生をおくるまでマドリーに残ることになるだろう。
ペレスは売るタイミングを間違えない。クラブを維持・発展させるためならロナウドでも放出する。「ロナウドが残る?彼には契約がある」と発言したのをみてペレスの方針がブレることはないと確信した。
ーロナウドが去る可能性は高いー
選手寿命、能力、ブランド、財政、クラブポリシー、ペレス会長、マーケティングの観点から総合して、ロナウドは移籍することになりそう。
ロナウドは本心では残りたいと間違いなく思っているだろう。カピタンが言ったとおり、レアルマドリードより良い場所は世界中どこにもない。
残るならロナウド側が交渉で折れるしかない。ペレスら経営陣が譲歩することはまずない。断言できる。バルセロナはメッシの年俸を人件費バランスを崩してでも引き上げたが、クラブのポリシー、財政を脅かすような要求は誰であれ絶対に受け入れない。マケレレやディマリアはそれで去った。選手よりクラブ、マドリーでは他のクラブより徹底されている。
しかし、彼の発言、メディアにでるニュースを見る限り、今のところロナウド側が折れることはなさそうだ。ワールドカップ前に移籍先まで決まることはないだろうが、マドリーから移籍することで合意することはありえる。
ジダンが去り、ロナウドまでアディオスになるとマドリディスタとしては寂しい気持ちになるが、いつかサイクルは終わる。
18/19シーズンは新しい歴史が始まるのだろうか。
新しい象徴は噂の彼になるだろうか?
楽しみだ。
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移籍情報(6月6日)現在
ジダンが辞任したことにより選手の移籍交渉は本格的に始まっておらず、新しい選手の名前もあまり表にでていないが、現時点での移籍のうわさをまとめる。
マネ(リバプール)FW
ジダンが辞任していなかったら最初の補強になっていたとのこと。交渉はストップしているそう。新監督が誰になるかにより獲得の是非が決まるとある。ソースが、フランス・フットボールなので信憑性は高い。CL決勝でみせたスピード感のある動きは印象的。
オマール・マスカレール(フランクルト)MF
2月26日の情報とはいえこれも信憑性高い。カンテラーノで移籍金もかからないためあり得る。フランクフルト前監督のコバチがバイエルンの新監督に就任することが決まっており、彼はマスカレールを獲得したいとの情報もある。守備的MFとしてマルコス・ジョレンテ、もしくはコバチッチの代わりに加入するかも。
アザール(チェルシー)FW
ペレス会長がデ・ヘア獲得はどうかとジダンにもちかけたが拒否し、ジダンはアザール獲得を希望したがペレスに断れたため監督辞任したという流れからでてきた話。ソースが、The Sunのため信憑性は低い。アザールは前々から噂されてきているし、デ・ヘアは高額の移籍金が想定されるためどうなのか。
アリソン(ローマ)GK
カシージャの去就が未定なうえナバスが高齢だからあり得る。ペレスは3年前から新しいGKを求めているから今年の夏は新しいGKを獲得する可能性は非常に高い。スペイン人GKを望んでいると言われており、今年の冬にはビルバオのケパを獲得直前までいった経緯がある。アリソンはブラジル人のためそこはどうだろうか。またケパにいくのか??
ネイマール(PSG)
パリに移籍してからずっと噂されている彼。日々新しいニュースがでてくる。移籍市場が終わるまでどうなるか予想がつかない。個人的には、可能性は十分にあると思う。パリがカタール国家のバックアップを受けていることでややこしいが、ペレスのこれまでの辣腕ぶりをふりかえるとビックトランスファーが成立するかも。マドリーの選手たちもネイマールに関して好意的なメッセージばかりなのことも移籍の信憑性を高めている。市場が閉まるまで大注目だ。
ジダンの後任監督について
ージダンの辞任ー
5月30日、13時、バルデベバスの記者会見で会長フロレンティーノ・ペレス同席のもとジダンが今季で辞任することが発表された。
ジダンは辞任を決めた理由を
「みなさんにとっては辞めるのは奇妙に感じるかもしれないが、私にとっては正しい決断であると思っている。チームには変化が必要であり、また、私とは違うメソッドが必要である。これ以上選手たちに要求することはできない」と述べており、来季もマドリーが勝つためには変化が必要だったことが理由だと発言している。
チャンピオンズリーグは1992年、リーグ制に移行してから連覇したチームは存在せず、3連覇という偉大な記録を達成したジダンが辞任するとは誰も予想していなかった。
ペレスも「予想していなかったこと」と率直に認めている。
今季のCL以外のコンペティションでは、リーガでは不安定な戦いが続き、コパ・デル・レイではベスト8で格下のレガネスに不覚を取り早期敗退しており結果をだせていなかった。あと、レアル・マドリーの監督は長くて3年しか続かないのでジダンの決断は正しかったと言える。
ー後任監督候補ー
メディアは早速後任監督候補の名前をあげている。可能性含めて一人ひとりみていこう。
- ナーゲルスマン(可能性0%)ドイツのビルド紙からでた記事。マドリーが正式にオファーを出したとあるがまず飛ばし記事だろう。どう考えてもブンデスリーガ中堅の監督で30歳と若く監督としても選手としても大した実績もないのにあり得ない。
- レーブ(可能性0%)安定のレーブ。20年前から常に候補としてあがっている。スペインメディアはレーブがなぜか好き。本人も会見で「絶対にない」明言している。サッカーに絶対はないがこれはない。
- コンテ(可能性10%)チェルシーを辞任するのは既定路線。どこかのビッククラブで働くことになるだろうがマドリーはない。コンテのような規律でガチガチに選手を縛り、自分にあった戦術を落とし込むようなタイプは合わない。
- グティ(可能性30%)下部組織のフベニールAの監督経験しかなく経験浅い。スコットランドやスペイン3部チームの監督就任の噂のほうが現実的か。カンテラーノのため名前があがっている印象。本命が決まらないときの非常手段としてならあり得る
- ポチェッティーノ(可能性50%)本人も乗り気。問題は最近スパーズと契約を更新したこととレヴィ会長がタフな交渉相手なこと。とくに会長は、ベイル、モドリッチを獲得するときに値段を釣り上げられ移籍市場ギリギリまで交渉している前例があるので、後任監督を早期に決めるなら他の候補を探すほうが現実的。ポチェッティーノが「マドリーに行きたい」と明言すれば早期決着はあるかもしれない。そのときでも多額の違約金が発生すると思われるので、そこまでして引っ張ってくるかどうかは疑問。
- アレグッリ(可能性70%)最も現実的。ユベントスでリーグ6連覇を達成し、CLでも決勝に2度進出した実績がある。2020年まで契約を残しているが契約はそこまで問題にはならないだろう。本人も新たな挑戦を求めるならマドリーは絶好のポジションであるし、ユベントスのフロントもチームに変化を与えるために契約解消することは十分に考えられる。前監督であるコンテもチェルシーを辞任するのが決定的なので後任ポストには困らない。そこまで戦術マニアではないし落ちついている印象があるのでうまくやっていけそう。
7人の名前を列挙した。他にもラウルやクロップの名前があがっている。
ー後任監督は誰であれ難しいー
誰になるにせよ、ジダンの後任は相当難しいだろう。CLで3連覇しているしチームはできあがっているうえジダンはマドリーのレジェンドだ。マドリディスタの期待値は非常に高くなっているので、彼と同じようなインパクトを残すのは誰であれミッションインポッシブルだ。
しかもレアルマドリードの監督は世界で最も難しい。世界最高の選手が集まり強烈なエゴが渦巻き、メディアとファンからは毎日厳しい目が向けられ、常にスポットライトが当たっている。歴代の名監督たちも一筋縄でいったことはなかった。
ジダンの後任、マドリーのプレッシャーを受け入れてでも監督をやる価値はもちろんある。CL4連覇、もしくはリーガでタイトルを獲得すれば素晴らしい功績として歴史に名を残すチャンスでもある。
メディアの報道をみると、ワールドカップが始まる前には決まりそうなので誰になるか注目したい。